ドイツの恋味(濃い味)スープ


ドイツ料理って言っても、あんまりイメージが湧かないわと言う方が多いのでは。

ソーセージ、酢漬けキャベツ、お皿にドカンと供される一皿料理など、
あんまりパッとしない感じばかり。

でもドイツでも素敵な思いがこもった料理がたくさんあります。

そんな中から今日は、ドイツのウェディングスープをご紹介。
ドイツ語ではHochzeitsuppeと呼ばれていますが、
一体どんなスープなんでしょう?

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末永くお幸せに!
新婚カップルに捧げる恋味(濃い味)のスープ   
            

人生の門出を祝う新婚カップルの挙式も無事終了、さあ披露宴の幕開きだ。
厳粛な結婚式のあとの楽しみは、やっぱり美味しいものを食べること。

その披露宴で最初に供されたのがこのウェディングスープだったそうです。
新夫婦の愛情がいつまでも続くように、幸せな生活を過ごして欲しいという
思いを込めてじっくり時間をかけて作りました。

肉、野菜そして愛情もたっぷり入ったスープ

ウェディングスープは、澄んだ肉ベースのスープに、にんじん、カリフラワー、
長ネギ、白アスパラガス、グリースノッケルン*、そして牛肉や鶏肉の
ミニハンバーグを入れて煮込む。

具がたっぷりで一口食べると濃厚なウマミが口中に広がる一品。
セロリを入れたり、ファンクーヘンの細切りを入れたりと、地方により具も様々だが、
「新婚カップルお幸せに!」という祈りを込めたのは全国共通だった。

自給自足の生活を強いられていたその昔、牛や豚、鶏など家畜を
各家庭で飼っていた。

父親は愛娘の結婚式に家畜を屠殺して、自給自足の野菜や肉を
ふんだんに使った料理を結婚式のゲストに振舞うのが慣わしだったとか。

そのひとつがウェディングスープという。

スープは披露宴の前日から仕込んだ。新郎新婦の両親は、
親戚や隣人の助けを得て、宴会料理の仕込みにおおわらわ。

最初に供するウェディングスープは、メインで供されるヒレ肉や
もも肉以外の部位をことこととじっくり煮込み、味を出す。

その後、野菜を入れてさらに煮込むと、肉のエキスと野菜のエッセンスが
たっぷり溶け出したスープの出来上がり。

*グリースノッケルンは、セモリナ粒、ミルク、卵、バターで作った
ふんわりとした団子でスープによく使われる。

娘の門出に向けた父親の思いを集結

かって、牛肉と鶏は富の象徴だった。

花嫁の父親は、愛娘の門出に盛大な披露宴を開き、
豪華な料理で客をもてなしたいと大量の家畜を屠殺した。

普段は質素な食生活を強いられていた村民にとって、
披露宴は美味しい料理にありつける特別な日でもあった。

披露宴は、言うまでもなく盛大に行われ、花嫁を持つ父親にとっては、
それこそ大きな経済的負担となった。

借金をしてでも娘のために豪華な披露宴を開きたいと思う親心は、
今も昔も変わらないようだ。

村を挙げて祝う披露宴は2~3日続き、屋外でダンスに興じたり、食したりが一般的。
そのため、当時の結婚式は天候の安定な5月6月ごろに開催された。

この時期は新野菜の収穫も豊富で、客に旬の食材を用いた美味しい料理を
振舞うのに最適な時期だったことも背景にあるようです。

俗に言われる「ジューンブライド」もこれに由来しているとか。

さらに、この時期はドイツ人が大好きな白アスパラガスの収穫シーズン。

高級野菜として愛されるアスパラガスも具に入れて、特別なスープとして作られた
ウェディングスープは結婚式になくてはならない一品でした。

ちなみに白アスパラガスはスープとは別にゆでて、このゆで汁もスープに入れたとのこと。
そして、スープに入れるアスパラガスは、やわらかくて味の凝縮した頭の部分だけを用いた。

名前の由来には、イタリア語のEine minestra maritataに由来しているとか。
こちらも訳はウェディングスープみたいです。

しかし、イタリアでは結婚式にこのスープは登場せず、普段食する単なる肉と野菜の
スープだったという説もあるようです。

恋をしているスープ?


ドイツでは塩味の強い料理が出されると、「コックは恋してる!」と言う。
つまり、コックは恋人のことが頭から離れず、味付けに注意を払うことも
できないほど気もそぞろになっていて、味が濃くなったという訳だ。 

ところが、しょっぱめのウェディングスープにはちょっと違う理由が。

それは、「塩分を多めに摂取し、健やかな身体で結婚生活を送り、
健康な子宝に恵まれるように」という思いが込められていたとか。

新郎は食事が始まる前にキッチンへ出向き、自らスープの塩加減を見るのが慣わしだった。

嫉妬やねたみを持った隣人や友人が料理を手伝っていたとしたら、
チャンスだ!とその思いを味付けに入れ込んでしまったら、
美味しい料理を期待している客をがっかりさせ、披露宴は台無し。

そんなアクシデントを防ぐためにも、新郎は、

「どうか美味しい料理を作ってください!」と

キッチンで手伝う人達へ感謝を込めて、大枚をはたく習慣が定着していたという。 

スープでカラダを温めて豪華な料理を楽しむ

新婚カップルは、一皿のスープを二人で食すのが伝統的な食べ方。
これからの人生を二人で歩む共同作業の始まりというところだろう。

また、最初にスープにスプーンを入れた人が、その後夫婦の主導権を握ることになると言う
決まりもあったそうです。
 
スープを最初に食するのには、合理的な理由もあるようだ。
カラダが暖まり、その後にいただく豪華な料理も胃腸に負担がかかりにくくなるからという。

そのため、現在は、結婚式のみならず、祝い事の席でもよく供される。

近年は、自宅で屠殺という風習もなくなった。
インスタントのウェディングスープも出回っているため、手軽に作れるようになったものの、
国内でもあまり知られていないスープのようだ。

そして、前菜というよりは、お腹一杯になる豪華なスープとして活用されていることが多い。

我が家では、「もうすぐ結婚記念日です!」というサインを夫に発信するためによく作ります。
効果はてきめん、記念日には真紅のバラの花束が届きます。 
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by foodwatcher | 2014-01-29 18:09 | 食の話